「まるで、ここに彼自身がいるような気がしますね」と安堵の笑みを浮かべた“久遠の栄光祭実行委員長”の長谷川栄先生の双の瞳――そこには、ネフライトのような輝きを放つシャンパンとアルバムに納められたアートラベルが映っていました。
――『魅惑のオクターブ』
それは、ワイン研究家たちが「モンターニュ・ド・ランスで最高のシャンパンの作り手である」と太鼓判を押す蔵元・フランソワ・スコンデ社で生産され、ピアノの詩人・ショパン生誕200周年を記念して命名されました。またシャンパンやワインのアートラベルは、音楽と同様に言語の壁が存在しないため、異文化交流を行う上で最良の手段として考えられてきたのです。
そして、日本芸術が国際的な文化交流の一助となることを祈願して、『魅惑のオクターブ』とファイリングされたアートラベルがショパン所縁の地であるショパン協会、在日フランス大使館、駐日ポーランド共和国大使館、全日本ピアノ指導者協会、日本ピアノ教育連盟へと寄贈された頃。
新興国として世界中から脚光を浴びているモンゴル国の首都・ウランバートルにあるモンゴル国際大学内の“和の宝珠美術館”へと弊社代表・志知正通が赴きました。この大学とは5年前から親交があり、2011年はモンゴル国にとって“日本文化週間”から20周年を迎えるため、御祝いとして、『魅惑のオクターブ』のアートラベルを久遠の栄光祭実行委員会から特別に寄贈させていただいたのです。
「ショパン生誕200周年を祝して、日本芸術が国際交流を目的としたシャンパンのアートラベルになったとお聞きしまして」――ファイリングされたアートラベルを受け取ったモンゴル国際大学の学長であるクオン・オ・ムーン氏は、たくさんの学生たちとともに満面の笑顔を浮かべました。
“和の宝珠美術館”は、モンゴル国でも珍しい日本芸術に触れられる憩いの空間。しかも、グローバルな交流ができる人材教育を理念としているモンゴル国際大学の敷地内にあり、ふだんは学生たちの学び舎としても活用されているため、ファイリングされたアートラベルは瞬く間に話題になりました。
「卒業を目前にショパン生誕200周年記念のシャンパンのアートラベルに触れることができて、とっても嬉しいです。それにショパンの曲は、子どもの頃から大好きで……」とはにかむ男子生徒。
「幼い頃から私は、ショパンに憧れて、音楽家になりたいと思っていました。そのような折、『魅惑のオクターブ』のアートラベルを目にすることができ、勇気付けられました。ありがとうございます」と手を合わせて、感謝する女子生徒。
アルバムをめくり、アートラベルを目にする度、生徒たちの感動と感謝の声が“和の宝珠美術館”内に広がってゆきます。その笑顔は、ピアノの音色に身を委ね、安らぎの表情そのものでした。
「モンゴル国内でもショパンの曲とともに日本芸術のメッセージを伝えてゆきたいですね」と語るクオン・オ・ムーン氏。その隣で、長谷川栄先生は頷きながら、そっと『魅惑のオクターブ』に籠められた想いを脳裏に巡らせました。
ショパン所縁の地に寄贈させていただいた『魅惑のオクターブ』とアートラベルたちが新時代の幕開けをもたらすように――と。
当イベントは月刊ショパン(2010年12月号、2011年1月号、2011年3月号)に掲載されました。
※室内写真はショパン・フェスティバル2011 in 表参道(2011年5月30日~6月4日)での一幕
写真提供 日本ショパン協会
文 V.ゆねりあ