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「あなたが生まれた日。私たちは、どれだけの幸せを感じたことでしょう」――古びた路線の上をマロニエの葉が舞う中、微笑を浮かべる白い帽子を被った貴婦人の隣で、少年は空を見上げて、「ねえ? ママ。ぼくが生まれた日は、どんな日だったの?」とそっと尋ねました。
 
 ――言葉では、とうてい表せない幸福感と無限の可能性。

「それはね、あの扉の向こうに答えがあるわ」
サァァァと一陣の風が吹き、貴婦人は「さあ、行きましょう」とやさしく少年の手を握りしめました。

 ――ギィィィ……

 朝の陽射しに照らされたベルシー美術館の大きな扉がゆっくりと開き、館内へと入ってゆく二人の親子。その背後には、喜びの表情に満ちた人々で溢れていました。

 2010年9月19日《ヨーロッパ文化遺産の日》の午前10時30分。
かつて、太陽王ルイ14世の時代に世界一のワイン蔵として栄えたベルシーの地で、Parisの人々は一様に開館前から『Paris芸術生誕録』の出版記念パーティとワインのアートラベル展の始まりを待っていたのです。

しかも、魔法と幻想をモチーフにして造られたベルシー美術館は、フランスの政府から歴史的建造物指定を受けており、入館できる日が限定されているため、人々の期待は最高潮に達していました。

 翠色に輝く庭園と風趣に富んだ建造物の先――そこには、アートラベルのパネルが施された四つのタワーと紅の輝きを放つアートラベルワインが整然と並んでいました。絵画、書道、工芸、陶芸、詩歌、写真、人形、フラワー、ジュエリーなど、その総数は276点。まさに一つ一つが生命を宿しているかの如く煌いています。

「日本芸術とフランスワインの融合によって生まれたアートラベルは、まさに日仏の絆そのものですね」と会場を見渡される久遠の栄光祭実行委員長である長谷川栄先生の双の瞳には、ご来場者にあたたかい眼差しでみつめられているアートラベルたちの姿が映っていました。

 

 パシャ! パシャ! と会場の至るところで、写真のフラッシュが瞬き、「私は、この日を告知で知って待っていたの」と声が聞こえたかと思うと、場内から一斉に歓喜の声が上がりました。
「ずっと前から、ぼくもパパとママとここへ来る約束をしていたんだ」とアートラベルのタワーの前で記念撮影する男の子。その横で「お兄ちゃん。私も楽しみにしてたんだから」と頬を赤らめる女の子もいました。
 そして、美術関係者やワイン関係者の方々からも「日本の芸術作品がアートラベルとして、フランスで鑑賞できることは、非常に感激すべきことであり、また趣のある世界だ」と大絶賛の声。

 実は、久遠の栄光祭実行委員会フランス最高顧問であるジャンポール・ファヴァン先生(※ベルシー美術館・館長)によって、一年前から「ヨーロッパ文化遺産の日にベルシー美術館において、日仏の重要な催しである日本芸術のアートラベル展が行われる」と告知していただいていたので、現地では大変な注目を浴びていたのです。

 ――『知徳の扉』のアートラベルに起用されること。

 それは、知恵と人徳によって創造された日本芸術とフランスワインが一つになった時、日仏の未来へと続く扉が開かれることを想定して醸造された伝説のワインの顔となることを意味します。ゆえに正午を迎えて振舞われたワインの試飲会には大行列ができ、音楽隊の歌声に合わせて、ダンスを踊る人たちもいました。

 やがて、場内が和やかな雰囲気に包まれた頃。会場の中央に用意された椅子を囲むようにして、人々の視線が集まりました。いよいよプレミアム表彰式です。
「フランスの“ヨーロッパ文化遺産の日”とは、人々が文化遺産と触れ合うことで、その大切さを学ぶ日であり、その定義には国の文化でもあるワインを味わうことも含まれています。そのような重要な日に芸術の都Parisの中でも最も歴史あるベルシーの地で、日本芸術とフランスワインによって、アートラベルが誕生したこと――それは、新たな日仏の友好の証ともいえましょう。この場に立ち会えることを感謝し、心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました」
ジャンポール・ファヴァン先生からご挨拶があり、ご受賞者の方々が表彰されてゆきます。

「ご受賞、おめでとうございます」と着流し姿のスタッフたちの声が上がり、場内に沸く拍手。その姿を小さな手で一生懸命にカメラに収めようとする子どもたちが囁いた言葉――それは、日本語で「おめでとう」でした。

「昔から私は、日本の芸術に惹かれていて、実物の作品は何度か鑑賞したことがあるけれど、こうして改めてアートラベルとなった姿を見ると、さらに趣を感じますね」と杖を持って、しみじみと語る老大人。

それを聞いて、「来年もまた日本芸術のアートラベル展やって欲しいな。みんな、そうだよね?」と目配せする女の子の周りでは、男の子も一緒になってはしゃいでいました。「うん。だって、日本の芸術が大好きだから」と。

Paris芸術生誕録の団扇が会場内を翠色に埋め尽くした頃、時はすでに夕刻になっていました。夕陽に染められた中、凛と響いた一人の少年の声。
「ママ。ぼくの夢は、日本の芸術家の先生みたいに素晴らしい作品を創ることなんだ」――少年を真ん中にして両隣には、白い帽子の貴婦人と大きな手をした紳士がにこやかな笑顔を浮かべて、ベルシーの裏門へと向かっていきました。

文 V.ゆねりあ